「見る」は敬語で何と言う?|全学年/国語

勉強コラム

皆さんこんにちは。個別教室のアルファです。
この記事では、札幌市内で小学生~高校生を中心に「完全個別指導」を行っているアルファが、「見る」の敬語表現について解説します!

突然ですが、このような言葉を聞いたことはありませんか?

「人間関係は、言葉に始まって言葉に終わる」

日々の生活は、「おはよう」の挨拶から「おやすみなさい」の挨拶で終わります。
職場においても、「おはようございます」で始まり、「お先に失礼します」、それに答えて「お疲れさまでした」で終わることが多いことでしょう。
そうしたことからも、言葉とは人間関係の基盤(少なくともその大きな要素)と言って差し支えないように思われます。

そうした人間関係において、敬語表現は、誤って使ってしまうと関係そのものにひびを入れかねないほど大切なものです。
しかし、単純で明快ではないために(浅野信先生も、『吾が国が敬語の国といはれるほど、極めて微妙で多色である』と述べておられます)、おかしな使い方をしてしまうことがままあるようです。
ある程度は文法的な決まりも分かっているはずなのに、実生活ではうまくそれが適用できないーそのようなことがよくあるように思います。
これを防ぐには、典型的な例をしっかりと頭に入れておき、それを軸にして考え、判断することが有効です。
ここでは、「見る」の敬語表現について、具体例を挙げながらお話します。実生活でも困らないよう、確実に覚えてしまいましょう。

目次

  • 「見られる」は「見る」の”尊敬語”
  • よくやってしまう誤り「二重敬語」 ~明確な違いが落とし穴に~
  • 例を挙げてみてみよう ~「見る」の尊敬表現~
  • 「見る」の謙譲語 は「拝見する」?
  • 例を挙げてみてみよう ~「見る」の謙譲表現~
  • *参考 動詞の尊敬語・謙譲語のルール
  • おわりに
  • 「見られる」は「見る」の”尊敬語”

    「見る」の尊敬表現は?と問われた場合、ビジネスパーソンであれば、大多数が「ご覧になる」と答えることでしょう。多くの企業人は、新人研修などの際にそのように指導されるようです。もちろん、間違いではありません。
    けれども、敬語の文法上の原則(下の*参考 をご参照ください)に照らし合わせた場合、「見られる」も「見る」の尊敬語として成立します。
    ここで、聴覚の「きく」を、視覚である「みる」と対比させてみましょう。

    ①部長は休日の午後などには日本画の画集をみられるのだそうですね。
    ②部長は休日の午後などにはジャズをきかれるのだそうですね。
    五段動詞(きく)と上一段動詞(みる)の違いはありますが、どちらも助動詞「れる」、「られる」による尊敬表現です。
    ②は使うが、①は使わないといういうかたが多いのではないでしょうか。
    意識的に「文法に、あるいはマニュアルに従って」というかた、特にそのような意識などせずにというかた、どちらが多数を占めるかはわかりませんが、①のようにではなく、
    ③部長は休日の午後などには日本画の画集をご覧になるのだそうですね。
    という表現を用いるかたが多いように思われます。
    ②についても、
    ④部長は休日の午後などにはジャズをおききになるのだそうですね。
    という表現を使うかたの方が多いかもしれませんが、「①ではなく③」は、非常に大きな差であるように思われるのに対し、「②ではなく④」は、さして大きな差ではないような気がします。

    この違いは、おそらくは、「明確さ」によるものでありましょう。「ご覧になる」は、形式上、「みる」から離れます(そのために「明確」になります)から、感覚的に「一段上」となり、尊敬表現として用いたい気持ちになりやすそうです。対して「きく」は、「ご覧になる」に対応する形としては「おききになる」ですが、「きかれる」も「おききになる」も、語幹が「き」で同一です。そのために明確な違いを感じにくく、結果的に②と④はあまり大きな差にならないのではないでしょうか。

    よくやってしまう誤り「二重敬語」 ~明確な違いが落とし穴に~

    尊敬語は、自分(や身内)がへりくだる謙譲語とは異なり、相手に対して敬意を抱いていることを伝えるための形ですから、その「伝える」を、「確実に、明確に伝える」としたい心理が働くのは当然です。しかしながら、この「明確を欲する心理」は落とし穴ともなります。

     上記の例でいえば、
    ⑤部長は休日の午後などには日本画の画集をご覧になられるのだそうですね。
    という表現を非常によく耳にします。これは、『二重敬語』と呼ばれる誤用です。
     もちろん、
    ⑥部長は休日の午後などはにジャズをおききになられるのだそうですね。
    としてしまうのも、同様に二重敬語で誤りとなります。注意したいことがらです。

    例を挙げてみてみよう ~「見る」の尊敬表現~

    ・【状況I】 会議などで、配附した資料を見ながら説明を聞いてほしい(出席者の多くは自分よりも目上)。

    「(お手もとの)資料をご覧になりながらお聞きください」
    ※「見られる」はこのようなケースでは使いにくく、「ご覧になる」を使うほうが良いでしょう(例えば、「お聞きになりながら、(お手もとの)資料を見られますようお願いいたします」などとすることは可能です)。
    !しばしば耳にする誤り
    「見る」の敬語としての誤りではありませんが、このような場合に、「資料のほうをご覧になりながら…」と、『のほう』を入れる人がいます。『クッションを入れてやわらかく』と気を遣った結果かもしれませんが、残念ながら逆効果となるおそれがかなりあります。不快感を覚える人も少なくありませんので注意すべきです。

    ・【状況Ⅱ】 数日前に顧客に送ったパンフレットを、見てもらえたかどうかが知りたい。

    「先日お送りしたパンフレットは見られました(でしょう)か」
    「先日お送りしたパンフレットはご覧くださいました(でしょう)か」(「見られました(でしょう)か」よりも丁寧)
    ビジネスにおいては、「ご覧くださいました(でしょう)か」が良いと感じる人が多いと思います。

    !しばしば耳にする誤り
    「先日お送りしたパンフレットはご覧いただけました(でしょう)か」
    これは、最近では許容されているという意見もありますが、本来は誤りです。「いただく」は「もらう」の謙譲語で、尊敬語に謙譲語を接ぎ木することになってしまうためです。
    また、繰り返しになりますが、「ご覧になられましたでしょうか」という二重敬語も、使ってしまわないように注意したいものです。

    ・【状況Ⅲ】 顧客に、手紙に同封したパンフレットを見てもらいたい(状況ⅱに先立ってこの状況があることも多いでしょう)。

    「(新製品の)パンフレットを同封いたしました。よろしければご高覧ください」
     このような場合には、「ご高覧」という、決まり文句のような表現があります。「ご覧ください」でも構いませんが、この表現も覚えておきたいものです(「ご高覧いただければ幸いです」という使い方も目にします。非常に丁寧な尊敬表現ですので、例えば長年取り引きのある顧客に対してですと、くどい感じが出てしまうかもしれません)。
    もちろん、状況ⅱの「ご覧くださいました(でしょう)か」を、「ご高覧くださいました(でしょう)か」とすることもできます。さらに言えば、どちらにも同じ表現を用いるよりも、依頼の段階では「ご高覧」を用い、確認の段階では「ご覧くださいました(でしょう)か」を用いる ― そのように使い分けるほうがより良いとする意見もあります。これは、相手との『距離感』までをも考慮した非常にレベルの高い使い分けだと思います。最初のお願いでは大きめに距離を取り、二度目のお願いではややその距離を詰めるという言葉の用い方です。浅野信先生が、『極めて微妙で多色』と言われるのは、こうしたことがあるためのように感じます。

    「見る」の謙譲語 は「拝見する」?

    「見る」の謙譲語は「拝見する」です。ほかにもありますが、絶対的エースという感じでそう言ってしまいたくなります。
     拝見の「拝」には、この字自体に「へりくだる」という語意があります。手紙の「拝啓」は「へりくだって述べます」という意味ですし、「拝読」、「拝借」、「拝受」、「拝顔」、「拝謁」など、どれもへりくだった言い方です。
    「拝見いたす」というものもあります(多くの場合、「拝見いたします」の形で用いられます)。「拝見する」をさらにへりくだって言う表現です。正用法ですが、状況によってはへりくだりすぎとなってしまったり、ややくどい感じが出てしまうかもしれません。その逆に、「見せていただく」という表現、これも「見る」の謙譲表現として良いのですが、こちらは、少し軽いと感じる人が多いのではないかと思います。

    見せていただく < 拝見する < 拝見いたす 
    となるでしょうか。
    状況によって使い分けることが理想かもしれませんが、「拝見する」を常に使うというのも決して悪くはないように思います。「拝見する」には、「拝見」という漢語が持つ、堅さ、重さがあって謙譲語として充分な上、くどい感じもありません。言わば、安全・安心の用法とも言え、そのため、絶対的エースと言いたくなるのです。

    【やや注意が必要な「拝見させていただく」】
    「拝見させていただく」は、非常に丁寧な表現です。そのため、注意が必要です。
    『させていただく症候群』という言葉をご存知でしょうか。「させていただく」を使いさえすれば敬語として問題ないと考えてしまっている人たちを軽侮するような、または、そうした風潮を揶揄する言葉です。そのような言葉があることからもわかりますが、濫発を気障りと感じ、この表現に対して少し過敏になっている人も多いです。限られた状況でのみ用いると考えるべきでしょう。
    ※「拝見させていただく」(さらには「拝見いたす」も)を、二重敬語で誤用とする意見を目にすることがありますが、これは、敬語連結ではあるかもしれませんが、二重敬語にはあたらないと考えるべきと思います。

    例を挙げてみてみよう ~「見る」の謙譲表現~

    ・【状況Ⅳ】 直属の上司からあるプロジェクトの指示書を読んだかと尋ねられた。

    「すぐに拝見しました」
    「すぐに拝見いたしました」
    「すぐに見(さ)せていただきました」
    「すぐに拝見させていただきました」
     多くの場合、上のふたつが良いでしょう。

    ・【状況Ⅴ】取引先のホームページをいつも見ていることを相手に伝えたい。

    「御社/貴社のホームページをいつも拝見しています」
     シンプルかつ謙譲表現として充分であるこれがベストではないでしょうか。
    「御社/貴社のホームページをいつも拝見いたしています」
    「御社/貴社のホームページをいつも見(さ)せていただいています」
    「御社/貴社のホームページをいつも拝見させていただいています」
    「拝見いたしています」は、このような場合にはもたついた感じになってしまいますし、「見(さ)せていただいています」も、同様でしょう。「拝見させていただいています」は、やはりかなりくどいように思います。 

    *参考 動詞の尊敬語・謙譲語のルール

    尊敬語の形式
    1)動詞+尊敬の助動詞「れる」・「られる」
    五段動詞とサ変動詞の未然形には「れる」、上一段動詞・下一段動詞・カ変動詞の未然形には「られる」
     書く → 書かれる   する → される      出発する → 出発される
     起きる → 起きられる 受ける → 受けられる 来る → 来られる

    2)お+動詞+になる
     書く → お書きになる 過ごす → お過ごしになる 飲む → お飲みになる
     !この「なる」に「れる」・「られる」をつけると二重敬語(誤用)
      ×お書きになられる ×お過ごしになられる ×お飲みになられる

    3)お+動詞+くださる(漢語サ変の場合には「ご」)
     たずねる → おたずねくださる 同行する → ご同行くださる

    4)言い換え
     見る → ご覧になる 言う → おっしゃる 寝る → お休みになる
     食べる → 召し上がる 着る → お召しになる 行く → おいでになる・いらっしゃる

    謙譲語の形式
    1)「いただく」、「してまいります」、「申しあげる/申しあげます」などをつける(お/ご との併用も多い)
     教えてもらう → 教えていただく 努力する → 努力してまいります
      お願いする → お願い申しあげる/申しあげます
      ※「させていただく」は「する」の謙譲表現。サ変動詞に用いることができますが、濫用は避けるべきです。

    2)お/ご+動詞+する
      持つ → お持ちする 報告する → ご報告する 
     ※尊敬の2)と混同しないようにしたい。 お持ちする(謙譲) お持ちになる(尊敬)

    3言い換え
     見る → 拝見する 言う → 申す・申しあげる 寝る → やすむ
     食べる → いただく 着る → 身につける 行く → 参る・うかがう 会う → お目にかかる

    おわりに

    如何でしたか?最初にも述べましたが、言葉は人間関係を形成するうえで極めて重要な要素です。
    無用なトラブルや誤解を避け、コミュニケーションを円滑に進めるためにも、是非、正しい敬語をマスターしてください。

    さて、この記事をお読み頂いた方の中には
    「子どもの学校の成績があがらない」
    「保護者として、どんな対策をしてあげれば良いのかわからない」
    「このままだと進学・受験も不安」
    といった、お子さまの勉強に関するお悩みを持たれている方も多いのではないでしょうか。
    何も対策を講じないままでいると、勉強に対する苦手意識は日が経つほどに広く、深いものになっていきます。

    そのようなお悩みを解決するのが、私たち『個別教室のアルファ』です。プロ講師による完全1対1指導を展開するアルファは、これまで15年以上にわたり、全国のお子さまの学習をサポートしてきました。

    また、「ご家庭の頼れる教育パートナー」を目指す私たちは、お子さまだけでなく、保護者さまとも充実したコミュニケーションを図ります。お子さまの将来について、共に考え、共に支え、共に理想を実現するのが私たちの仕事です。
    今、お子さまの勉強についてお悩みの方は、是非一度、アルファの授業を体験してみてください。